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エクスプレスニュース No.40

「扶養義務者からの非課税贈与」

相続対策の一つに相続財産を減らす効果のある生前贈与が挙げられますが、原則として贈与を受けた者に贈与税が課されます。しかし贈与税の取扱いでは、財産の性質や贈与の目的などからみて贈与税が課されないものが定められており、今回はその一つである「扶養義務者間の生活費または教育費の贈与」について、取り上げます。

1.非課税贈与の内容(相続税法)

扶養義務者間において生活費や教育費を援助する場合、通常必要と認められるものは贈与税が課されません。ただし、この非課税の対象となるのは、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てられるものに限られています。
また、贈与税が非課税のため、贈与者が死亡した際の相続前3年(順次7年に移行。以下同じ)以内の相続財産への加算の対象にならず、相続財産を減らす上で有効な手段となります。

2.扶養義務者とは

非課税の対象となるには、贈与者と受贈者(贈与を受ける者)が扶養義務者の関係にあることが必要です。相続税法上の扶養義務者は下記の通りです。

① 配偶者
② 直系血族(父母・祖父母・子・孫など)・兄弟姉妹
③ 三親等内の親族(叔父叔母・甥姪など)で生計を一にする者
④ 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者になった、三親等内の親族(叔父叔母・甥姪など)

(1)上記①②のケース

夫婦間や親子間、祖父母と孫、兄弟姉妹間については扶養義務者間に該当するため、これらの関係において通常必要と認められる生活費や教育費の贈与をした場合は、生計が別々でも非課税となります。

(2)上記③④のケース

例えば、弟が生活に困窮し子供の学費を払えず、兄がその学費を援助するケースでは、兄と弟の子供(三親等内の親族間)は、③「生計を一にする場合」や、④「家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となる場合」であれば、扶養義務者間での教育費の贈与として非課税となります。

3.生活費・教育費等の範囲

(1)生活費の具体例

生活費とは、教育費以外の費用で、日常生活を営むのに最低限必要な費用を指しますが、具体的には生活用品費、飲食費、水道光熱費、家賃、交通費、結婚資金、出産費用、治療費、養育費等が挙げられます。

(2)教育費の具体例

教育費とは、教育上通常必要と認められる学費、教材費、文具費等をいい、小学校・中学校の義務教育費に限らず、幼稚園・高校・大学・専門学校の費用や、比較的高額となる医学部の入学金や授業料、海外留学の渡航費や授業料も含まれます。

(3)結婚費用、出産費用等

①家具、寝具、家電製品等の費用

結婚するにあたり、通常の日常生活を営むために必要な家具、寝具、家電製品等の贈与を受けた場合、又はそれらの購入費用に充てるために金銭の贈与を受け、その全額を家具什器等の購入費用に充てた場合には、贈与税の課税対象となりません。

②結婚式・披露宴の費用

結婚式・披露宴の費用負担(本人・親)は、その内容、招待客との関係・人数や地域の慣習などにより様々です。それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき者それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与には当たらないため、本人の所得や保有財産の状況に関係なく贈与税の課税対象となりません。

③出産費用

出産にあたって、検査・検診代、分娩・入院費に充てるために贈与を受けた場合には、これらは治療費に準ずるものであるため、贈与税の課税対象となりません。
また、新生児のための寝具、産着等ベビー用品の購入費に充てるため金銭の贈与を受けた場合についても、生まれてくる子供が通常の日常生活を営むのに必要なものの購入費に充てられている部分は、贈与税の課税対象となりません。

④結婚祝いや出産祝い等の金品

個人から受ける結婚祝いや出産祝い等の金品は、社交上の必要によるもので贈与をした者と贈与を受けた者との関係等に照らして、社会通念上相当と認められるものは、贈与税の課税対象となりません。

(4)奨学金の肩代わり

例えば、奨学金を返済する義務がある子供に代わって親が返済した場合、教育費の支払いではなく子供に対する贈与となり、贈与税の課税対象となります。
ただし、子供が資力を喪失し返済が困難と認められる場合は、課税されません。

4.「通常必要と認められるもの」の判断基準

贈与税が非課税になる生活費や教育費で「通常必要と認められるもの」とは、扶養される側の必要性と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断されます。
そのため、扶養される側の所得や保有財産額などの具体的な要件は設けられていません。

(1)賃貸住宅の家賃等を親が負担した場合

一人暮らしの学生が自らの資力では家賃の支払ができないため、親がその家賃を支払う場合には非課税となります。一方で、社会人の子供が家賃支払のための十分な資力がある場合には、贈与税が課される可能性も考えられます。

(2)前もって一括して渡した場合

生活費または教育費として必要な都度、直接これらの用に充てるための贈与であれば非課税となりますが、生活費や教育費に充てるため前もって一括で支給してその残額を貯金した場合、その残額については贈与税の課税対象となります。
一方で例えば、孫の大学の学費を大学へ直接振り込む場合は、確実に学費の納入のためのものとわかりますので問題ありません。

(3)有価証券の名義変更をした場合

有価証券の配当金を生活費や教育費に充てるために、その有価証券の名義変更をした場合、その名義変更時にその配当を受ける者が、その元本である有価証券を贈与により取得したことになるため、贈与税の課税対象となります。

5.教育資金の一括贈与の非課税制度との併用

(1)教育資金の一括贈与の非課税制度(措置法)

①制度の内容

教育資金の一括贈与の非課税制度とは、父母や祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫に対して、取扱金融機関との教育資金管理契約に基づいて教育資金を一括贈与した場合、受贈者ごとに1,500万円(うち、学校等以外は500万円)まで、贈与税が非課税となる制度です(エクスプレスニュースNo.12参照)。

②教育資金の管理残額の取扱い

教育資金管理契約の期間中に贈与者に相続が発生した場合、その贈与者の相続税の課税価格合計が5億円超の場合や、5億円以下でも受贈者が23歳以上の場合等においては、教育資金の管理残額(使い残し)※は相続財産に加算されます。
ただし、下記要件のいずれも満たす場合には、その使い残しに関しては、相続財産に加算されません。
・贈与者の相続税の課税価格合計が5億円以下
・受贈者が23歳未満の場合や学校等に在学している場合など

※教育資金の管理残額 = 非課税拠出額(1,500万円を限度)- 教育資金の払出額

③生前贈与加算との関係

相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続前3年以内に被相続人から暦年贈与により財産を取得している場合、その贈与財産は相続財産に加算されます(生前贈与加算)。
上記②の教育資金の管理残額も贈与者である被相続人から相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続財産に加算されますが、その場合でも、受贈者がそれ以外の財産を相続又は遺贈により取得していない場合には、例え相続前3年以内の暦年贈与により取得した財産があったとしても、その暦年贈与の財産は、例外として生前贈与加算の対象になりません。

(2)贈与を組み合わせる

贈与者が祖父母のケースでは、上記の教育資金の一括贈与を行った後、祖父母の判断能力に問題がない間は、今回取り上げた扶養義務者からの非課税贈与や暦年贈与を行い、その後判断能力がなくなった以降は、受贈者の孫が教育資金の一括贈与分を使用することで、より効果的な相続対策が可能となります。

(担当:福田)

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